本ページでは現在、
主にPCを使用した合理的配慮に関する情報をまとめています。
‣情報提供者:小浦むつみ氏
石川県では
2023年度公立高校入試で、PCの使用が初めて認められたことがニュースになるなど、教育現場での合理的配慮の提供実績が積まれておらず、生徒児童本人とその保護者が教育現場と協議をする上においても困難を極めます。
当サークルでは、
子どもたちにとって、より一層の理解と配慮に繋がることを目的とし、まずは「PCの使用」という合理的配慮の提供を1つの突破口として、認識を広めていきたいとの思いから、小浦むつみ氏がご自身の経験から得られた情報を必要とされる方と共有するために開設いたしました。
入試で合理的配慮を受ける
~合理的配慮提供の意義~
入試における合理的配慮措置の適用可能性や内容について、受験者や保護者に余計な不安を抱かせてしまうことは、入試を実施する側がその受験生に対して不利な扱いをしていることにもなってしまいます。
また当該受験生に対して入学後にどのような合理的配慮措置がなされるか(なされないか)によって、志願校を変更しなければならない場合も十分ありえます。
‣情報・意見提供:金沢大学 岩本健良先生
中学入試
石川県の現状
「石川県立中学校入学者募集要項」 においては、
「6 適性検査における配慮事項」として
「適性検査を受検するに当たり、病気等の事情により特別な配慮を必要とする場合、保護者は出願期間開始前に県立中学校と十分相談する。」
とわずか3行しか記載がありません。
これでは、障害者等の受け入れに消極的であり、合理的配慮の責任を十分に果たしていないと思われてもやむをえないでしょう。
あわせて改善・充実を図るべきです。
「第3期 石川の教育振興基本計画」では、
基本理念として「未来を拓く 心豊かな人づくり」を掲げ、
施策の方針として「2-7 特別な教育的支援が必要な児童生徒に対するサポートの充実」を公約しています。
共生社会のあるべき姿として、
国際的に求められているインクルーシブ教育の実現のためにも、令和6年度入試に向けて教育委員会には速やかな見直しと積極的な改善が求められています。
高校入試
★合理的配慮の申請時期について★
次の⑵の特別な配慮を必要とする者は、
入学願書出願開始日までに、
学力検査等に関する特別配慮
事項申請書(様式8)により中学校長を経由して志願先高等学校長に申請するものとする。
「令和5年度石川県公立高等学校入学者募集要綱」 より一部抜粋
実際の合理的配慮の申請については、該当年度の要項をご覧ください。
文部科学省の指針
文部科学省から2022(令和4)年 12 月に
「高等学校入学者選抜における 受検上の配慮 に関する参考資料」が出され、この中で「書字に関する配慮」としてタブレット端末の使用が例示されています。
★26ページ【自閉症のある生徒に対する配慮の例】
★29ページ~30ページ【学習障害のある生徒に対する配慮の例】
パソコン使用についても、必要な措置・検討のうえで、同様に認めるべきと考えられます。
石川県の指針
文部科学省「高等学校入学者選抜における 受検上の配慮 に関する参考資料」や大学入試等での近年の説明・扱いと比べて、必要な情報がかなり不足し、また不明確です。
石川県の現状
受験者や保護者のみならず、
出身中学・志願先高校・教育委員会担当者にとっても、相談対応や調整に余計な時間と労力を費やすことになっているように思われます。
たとえば
「13 学力検査等において特別な配慮を必要とする生徒の申請手続等」 様式8「学力検査等に関する特別配慮事項申請書」(50/67) に次の事項の欄がありません。
・就学について配慮を希望する事項
(入試には支障なくても、就学の上で配慮を要する場合があります(例:体育の授業)
・中学校等でとられていた配慮
・日常生活の状況
これらの欄を設けて円滑な検討・手続きが行えるようにすべきです。
大学入試
大学入試においては、すでに下記の通りPC使用が認められています。
高校入試においても同様に認められるべきです。
鳥取大学での例
すでに鳥取大学では、読み書き障害を持つ受験生に、2011年秋の入試でPC使用を認めた例があります。
「パソコン使用の申請は、同大にとっても初めてのケースだった。ワープロの漢字変換機能を使えば誤字脱字が減り、他の受験生との不公平を生みかねない。」
一方で、障害への合理的配慮という側面に立てば、認めるべきだとの意見も出た。
「例えば、手が動かせない障害がある受験生がいれば、代筆での受験もありえる。能力がある受験生への門戸を、手書きという方法にこだわって遮断してしまう方が問題が大きいとの結論に達した」。
藤田安一・同学科長(61)はそう説明する。」
‣引用:発達支援ひろがりネット
大学入試センターの指針
大学入試センターは
「令和5年度 受験上の配慮案内」において、
「パソコン(タブレット端末使用)」について、希望相談できることを明記しています。
2023年10月現在
「令和5年度 受験上の配慮案内」ページは削除されており
「令和6年度 受験上の配慮案内」に更新されています。
★注意事項★
大学入試センターが開示する受験上の配慮案内は、毎年更新されるようです。
合理的配慮の申請については、該当年度の案内を必ずご覧ください。
合理的配慮の申請時期は
例年8月~9月と入試に先立って〆切が設定されているようです。
申請の際には〆切時期についても注意が必要です。
PC使用に関する資料
PC使用は筆記よりも有利になる?ならない?
北陸大学 河野俊寛先生
書字速度を評価するURAWSSⅡという検査では,中学3年生の書字速度の平均が41.6±11.1字/分です。
つまり,30.5字から52.7字の間に約70%の中3の生徒がいる,ということです。
日本情報処理検定協会主催の日本語ワープロ検定試験の合格基準では,中3の平均書字速度40字でキーボード入力できれば準2級合格になります。
手書き速度が一番速いレベルの50字で入力できれば2級に合格します。ワープロ検定の最上位の1級で70字/分の入力速度です。
中3でワープロ検定1級に合格するだけの入力速度の生徒は珍しいのではないでしょうか。
つまり,キーボード入力が速い,といっても,手書きの平均速度の約1.8倍になる人はほとんどいない,ということです。
ですから,PCはスピードが速く有利になる,という根拠は弱い,ということです。
もし,それでも入力速度が速いと有利になる,というのであれば,入力速度に応じて試験時間を短縮すればいいのではないでしょうか。
試験時間の延長があるのでしたら,短縮があっても問題がないと思います。
PC使用に関する専門家の意見
教育学者 関西大学名誉教授 久保田賢一先生
PCが,スピードが速く有利になるならば,すべての児童生徒がPCを使えばよいと思います。
私たちは,道具を使いこなすことでいろいろなことをしてきました。
紙と鉛筆で不利になる子どもは,PCを使えばよいと思います。
足が使えない人は,車椅子を使って移動します。
必要な道具を適切に使いこなすことは重要です。
インクルーシブ教育を目指すならば,当然考えなければいけないことです。
最後に
本情報ページを作成するにあたり、
全面的にご協力頂いた小浦むつみさん、
そしてご意見・情報を掲載することを快諾下さった
金沢大学 岩本健良先生
北陸大学 河野俊寛先生
関西大学名誉教授 久保田賢一先生
(本文掲載順)
心より感謝申し上げます。
子どもたちの未来が、明るく希望に満ちたものになりますように。
~共生社会実現に向けて~
合理的配慮の実例集
こちらでは、
本サークルにゆかりの方が、
実際に学校との協議の末、実現した合理的配慮について
その経緯と得られた配慮等についての
記事を掲載いたします。
*リンクは本サイトのブログページにジャンプします
・実例その1「私立通信制高校における書字障がいへの配慮」